じっとしていると、血の巡りがわるくなり、酸素もいきわたらず、疲労物質が滞って、筋肉は硬くなります。
硬くなったら、関節に負担がかかるようになります。
人間は、おおざっぱに言うと、骨と筋肉でできた、動く人形のようなものです。
棒と棒を紐でつなぎ、それを曲げたり伸ばしたり動かすのに、輪ゴムを棒をまたいでひっかけるようにくっつけて、作った人形のようなものを想像するといいでしょう。
つまり、棒が骨(骨格をつくります)、紐が関節周辺の結合組織、腱(けん)や靭帯(じんたい)です。そして輪ゴムが筋肉だとイメージしてください。
足を曲げようとするとき、腿の後ろの筋肉(ハムストリングス)が縮み、腿の前の筋肉(大腿四頭筋)が伸びることで膝が曲がります。
もしも腿の前の筋肉(大腿四頭筋)が硬いと、膝周りの腱や靭帯が余計にのびなければ、曲げられず負担がかかってしまいます。これが膝の痛みの原因だったりします。
さっきの人形でイメージしましょう、つないでる紐は本来伸び縮みしないのです。
連結の役目なので、伸び縮みしてはこまります。それが腱や靭帯です。
ところが、硬くて伸びない筋肉のせいで、腱や靭帯が必要以上に伸ばされ酷使される。これがダメージを引き起こします。
腰も同じなのです。
身体を前にかがめようとするときには、本来は骨盤から倒れます。
骨盤を倒す動作には、腿の後ろの筋肉(ハムストリングス)が伸びなければいけません。しかし、ハムストリングスが硬くなっていると、骨盤が前に倒れず、腰のあたりの関節を必要以上に前に倒すことになります。
これを繰り返すことで、腰椎に疲労がたまり、腰痛を引き起こすことになります。
また、ハムストリングスの硬さのせいで、椅子に腰かけるとき、つい座骨を前に引き寄せて座るので、骨盤がやや後ろに寝てしまうような座り方になります。
そうすると背骨は前かがみとなり、丸まり、猫背になってしまいます。
肩が前におち、胸が狭くなり、呼吸も浅くなるでしょう。すぐに疲れてしまいます。
頭が前におち、頸椎に負担がかかりストレートネックになりかねません。肩も凝るでしょう。目も疲れます。
ハムストリングスが硬いと、風が吹けば桶屋が儲かる、ではないですが、姿勢を悪くしてしまい、腰痛だけでなく、頸椎にも、そして肩こり頭痛もつながってるかもしれないです。
本来、座るときは骨盤をやや前に倒すようにして、腰椎が前にカーブして胸のうしろでやや後ろにカーブして首のあたりでまた前にカーブという、背骨のS字ラインが必要です。そうでないと、5キロから6キロあるといわれている重たい頭も支えきれないです。
姿勢よく座っていれば疲れにくく、腰にも負担がかかりません。
なので、ハムストリングスを柔らかくすれば、座り姿勢も改善され、日常生活の前傾姿勢の時に、腰だけを折り曲げずに、骨盤を前傾させて動けるので、腰痛にならずにすむでしょう。
ヨガは、前傾姿勢をとるポーズもいろいろありますが、立ったまま前屈する場合、足の後ろの筋肉が硬い人は、必ず膝を曲げながら前屈するように声をかけています。
ハムストリングスが硬い人が、足をつっぱるようにして、前傾しても、骨盤はほとんど動かず余計腰痛を曲げようとするだけで、腰痛を悪化させかねないです。
足の硬い人が前傾する場合は、さきに膝をまげて深く前屈して、指先を床に(かかとの横あたりに)つけて、両腿に胸がのるようにして、顔を膝に引き寄せ、膝が曲がったまま、お尻をちょっとずつ、天井のほうに上げるようにします。
これを毎回行うことで、腿の後ろのハムストリングスは伸びてきます。
むやみに前屈しても、ハムストリングスは伸びていないことがあります。
骨盤の下のほうの座骨あたりから、腿の後ろを通り、膝の後ろまで、長いゴムがついているとイメージして、骨盤を前傾させることで座骨をゆっくり遠ざけていけばハムストリングスは伸びます。
ハムストリングスのストレッチ
(その1)
①足を10センチ開いて足元を平行にして立つ。
②膝を曲げながらゆっくり前屈して指先をかかとの横につけ支えるように。
(足の筋肉が弱くてつらい人は、足の両サイドに広辞苑を立てたくらいの高さのものを用意してそれをつかむと楽です。ヨガではヨガブロックを両サイドにおいてつかんで前屈します。)
③頭を下げたまま、ゆっくり座骨を天井に向けていく。(ほんの1センチほど動く程度でいい、膝は曲がったまま、ほんの少し伸びた程度でいい。)
④30秒(5呼吸程度)キープしてゆっくり起き上がる。
(その2)
①仰向けになって、右ひざをたてて、土踏まずにベルトのようなものをひっかける(タオルでもいい)
②膝は曲げたまま、ゆっくり足の裏を天井にに向け右足を伸ばしていく。
③腰が浮いてしまわないように、右座骨を床にしっかり引き寄せて、さらにいける範囲で右足を伸ばして、いた気持ちいいところで、キープ。30秒。
④ゆっくり足を曲げておろし、左足も同様に。
他にも、最近メディアで「ジャックナイフストレッチ」が紹介されました。
西良浩一医師が考案したものです。
浅く椅子に腰かけて、足首をもって、(胸は膝に乗せ)そこから、お尻をうかせていきます。ハムストリングスが、いた気持ちよくのびたら、10秒キープして、それを2セット。朝晩に行うだけで、劇的に腰痛が解消されるようです。安全で簡単で、仕事の合間にもできるので、腰痛の人は試してみてはいかがでしょうか。
ハムストリングスのストレッチ、それだけの意味があるので、ちょっとだけ柔らかくしてみませんか。
バレリーナの様にべったり、前屈できる必要はありません。今の硬さがちょっと柔らかくなればきっと楽になるでしょう・・・