英語の発音を勉強しているときに、英語の歌を歌うことを勧められます。
そこで、自分なりに好きな歌をピックアップしていて、時々口ずさんでいます。
その中に、イーグルスの「Desperado」(デスペラード)があります。
だらーんと舌の力を抜いて、落ち着いてth、r、l、f、vの発音や、リエゾン(音のつながり)を意識しながら歌えば、それなりに歌えるので、お気に入りの曲です。
歌詞も味わい深く、英文のまま感じ入ることができる名曲です。
その歌が、たまたま深夜ドラマのエンディングで流れてきました。
あっ!これ好きな歌だ。
思わず一緒に歌ってしまいます。
でも、どうしてこの曲を流すんだろう・・・・
そう思って、歌詞を見直すと、なるほど、ここかあ・・・と、この曲を選曲した人の気持ちを察してみました。
ドラマのタイトルは「リテイク」(番組のホームページはこちら)
今から数年後の未来にタイムマシンが出来ています。未来人が現在を変えようとしてやってきます。現在を変えると、未来が変わります。それを阻止する部署がすでに現在の法務省にあるという設定です。やってきた未来人をみつけて、一刻もはやく捕獲しようとするドラマです。
SFなんですが、SFっぽくなくて、人情ものです。
やってくる未来人は、過去の自分や他人に干渉して、新たな人生のやり直しを画策する人々です。
タイムマシンがあったら、過去の、あの時点に戻ってやり直したい。だれもが思うことがテーマになっています。
そして、見つかった未来人は、まるで山田太一のドラマのような、あたたかいアプローチと説得で、収容所とされる別荘へ行くことになります。(タイムマシンは現在にはまだないので、タイムマシンが発明されるまで、数年、隔離されるのです。)一話ごと完結するドラマです。東海テレビの制作で、複数の脚本家によるようです。
主人公は、未来人を見つけて、説得する法務省の役人、筒井道隆です。久しぶりにドラマで拝見しましたが、あの、抑え気味のいい味が「あすなろ白書」のころを思い出します。もっと映画やドラマに出てほしいと思うのですが。ちょっとしか出ないところも、それはそれで、いい感じです。このドラマも深夜枠で、あまり知られていないかもしれないです。しかしレアものを見つけたような嬉しさがあります。
そんな、ドラマのエンディングの曲ですが、「未来人」を、「Desperado」と見立てたのでしょう。
さまよう未来人を、愛情をもって、諭(さと)す。この人間ドラマに、歌詞が重なります。
行き詰った人生、その原因であろう過去に執着し、それを変えようとして現代にやってくる未来人。結局は捕らわれ、別荘という名の収容所に送り届けられる。毎回そのラストシーンでこの曲が流れます。
まるで慰めるようなこの歌は、やってきた未来人の無念を癒す鎮魂歌でしょうか。
過去を変えようとする考えのみに捕らわれる様(さま)は、まさに、殻に閉じこもり、さまよう姿に似てると諭(さと)し、Your prison is walkin’ though this world all alone.と言っているようです。
タイムマシンがあったって「戻れないんだよ」と語りかけ、You ain’t gettin’ no youger. でしょうか。
ほら、見えてるはずのものに目を向けようよ、Now it seems to me, some fine things have been laid upon your table. But you only want the ones that you can’t get. という冒頭の歌詞も、胸を打ちます。
感慨深いドラマと、このエンディングの曲は、本当にぴったりです。
「Desperado」
(desperadoの直訳は、「ならず者」です。この歌の深い意味に開拓や戦争など歴史背景もあるのかもしれませんが、「歌」は、リリースされれば、作り手を離れ、独立して解釈されるもの。私がこの歌を聴くときは「いろいろあった人に呼び掛けている」と解釈しています。下記の和訳は、なるべく忠実に、私なりに訳したものですが、いい歌詞なので、よかったら読んでください)
Desperado(ならず者って呼ばれたお前、デスペラードよ)
Why don’t you come to your senses? (目を覚まそうよ)
You been out ridin’ fences for so long now (ずっとフェンスにまたがったたままだぜ)
Oh, you’re a hard one(まったく、難しいやつだよお前は)
But I know that you got your reasons(お前の理由もわかるさ)
These things that are pleasing you can hurt you somehow(自分を満足させることが、自分自身を傷つけるってこともあるのさ)
Don’t you draw the queen of diamonds boy(ダイヤのクイーンなんて選ぶなよ)
She’ll beat you if she’s able(それはお前をいためつけかねないのさ)
You know the queen of hearts is always your best bet(ハートのクイーンが一番いいってわかってるだろ)
Now it seems to me, some fine things have been laid upon your table(ほらテーブルには、いいもの(カード)があるように思えるけど)
But you only want the ones that you can’t get(でもお前は手に入らないものを欲しがるんだ)
Desperado, oh, you ain’t getting no younger(デスペラードよ、お前はもう若くはなれないんだ)
Your pain and your hunger, they’re driving you home(痛みや空腹がお前を家に送り届けるさ)
And freedom, oh freedom well, that’s just some people talking(自由だって?自由かぁ・・そう、人は言うよな)
Your prison is walking through this world all alone(お前は檻(おり)のまま、ずっと一人で世界中をさまよってるのさ)
Don’t your feet get cold in the winter time?(冬には足が冷たくないか?)
The sky won’t snow and the sun won’t shine(空は雪も降らさず、太陽は照らしもしない)
It’s hard to tell the night time from the day(夜も昼も区別つかず)
You’re losing all your highs and lows(お前はすっかり感情の起伏を失ってるよ)
Ain’t it funny how the feeling goes away?(おかしくないかい?こんな感情がなくなってるなんて)
Desperado, why don’t you come to your senses? (デスペラードよ、目を覚ませよ)
Come down from your fences, open the gate(フェンスから降りて、門をあけろよ)
It may be raining, but there’s a rainbow above you (雨かもしれない、でも虹がかかってるさ)
You (had) better let somebody love you (誰かに愛してもらったらいいじゃないか、そうすべきさ)
You (had) better let somebody love you (愛してもらえよ)
Before it’s too late(手遅れにならないうちに)